私は最近いろんな英語学習法を学んでいるのですが(前回の記事)、
先日「第二言語習得論」という研究に関する外国語学習法の本を読みました。
海外の大学で教えておられる言語学者・白井恭弘さんの
「外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か」という本です。
難しい文章は苦手ですが、この本は一般向けにわかりやすく書かれておりスッと読めました。
自分の語学学習にすぐに活かせる実践的な内容が盛りだくさんなので面白く、「この勉強法を早く試してみたい!」とワクワクしながらあっというまに読了。
この記事では、本書で解説されている効果的な英語学習法のポイントを紹介します。
【要約】外国語学習の科学ー「2つの要素」とは?
第二言語習得論によると、外国語学習は2つの要素でできています。
1. 理解可能なインプットをすること
2. 意識的に学習したスキルを何度も繰り返すこと
この2つを行えば、外国語を習得できるということです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
言語習得の要素①:理解可能なインプット
理解可能なインプットとは、
内容が理解できる文章を読んだり聞いたりすること
です。
実は、これは外国語だけでなく母語の習得にも共通する学習法。
私達は日本語の文法を知らなくても、単語を一生懸命暗記しなくても、日本語ペラペラです。
その理由こそが理解可能なインプット。
赤ちゃんがいつのまにか言語を習得していくのは、毎日ずーっと身の回りの言葉を聞いたり読んだりした積み重ねの結果にほかなりません。
そして、この「大量のインプットによる言語習得」は母語だけでなく外国語にもあてはまることが研究で示されているのだそうです。
英語を習得するのであれば、
理解可能な英語を大量に読んだり聞いたりすることが、科学的に正しい学習法ということです。
インプットだけで英語を習得できるのか?
ここで気になるのが、
「英語を読んだり聞いたりするだけで、英語が使えるようになるの?」
ということですよね。
答えはNoです。
インプット(読む、聞く)だけではだめで、
アウトプット(話す、書く)の必要性があることも外国語習得の条件とのこと。
これはなぜかというと、
アウトプットの必要性によって、インプットの質が劇的に向上するから
です。
例えば
Can I have the check, please?
という表現を学んだとします。
「お会計お願いします」という意味のこのフレーズ。
より覚えやすいのは
1. 近々ニューヨークに旅行する予定のAさん
2. とくに旅行の予定はないBさん
のどちらでしょう?
・・・と聞かれたら、
きっとほとんどの人は「Aさん」と答えるのではないでしょうか。
アウトプットの必要性を感じているからこそ、
英語表現をインプットするときに脳が「これは覚えておかなくちゃ!」と必死になってくれるのですね。
人間の脳は基本的に怠け者です。
なので「あぁ、これは別に覚えなくてもいい情報だな」と脳が判断したら、
その情報はあっというまに記憶から忘れ去られてしまいます。
でも「この知識は必要だから、絶対覚えとかなくちゃ!!」と脳が思ったものは、記憶に残る可能性が高まります。脳がフル活動してくれるからです。
そして「これは覚えないといけない大事な情報なんだ」と脳に思わせるために、アウトプットの必要性が必要というわけです。
これまでの話をまとめると
- 外国語習得の核は【理解可能なインプット】
- インプットの質を上げるため【アウトプットの必要性】も必要
となります。
英語を効率的にマスターするには、
英語をたくさん読んだり聞いたりしつつ、
英語を実際に使う機会をどんどん作るようにすればよいということです!
不足しがちな外国語のインプットは「例文暗記」で補える
英語を習得するには、意味がわかる英語をたくさんインプットすればいい!
そうはいっても、母語は生まれてからずっとインプットしてますが、
大人になってから外国語を学ぶ場合は到底、同じようにはいきませんよね。
当たり前のことですが、外国語は母語に比べてインプット量が圧倒的に少ないです。
そこで、不足しがちなインプット量を補充する方法が例文暗記です。
例文暗記とは
- ネイティブが日常で使うような自然な英文をたくさん覚える
- 覚えた英文をベースに、単語を入れ替えて新しい英文を作る
この2つのステップで、インプットを意識的に増やすことです。
という疑問が浮かんだ方にわたしのおすすめを紹介しておきますね。
この2冊はどちらも日常で使える英語らしい表現を学べるので、例文暗記にぴったりです。
どちらも中学レベルの英語がわかれば問題なく使えますが、しいて言うなら「英語は3語で」が初心者向け、「どう言う?」は中級者以上向けです。
言語習得の要素② 学習したスキルを何度も繰り返す
もうひとつの言語習得の要素は
意識的に学習したスキルの反復練習
です。
意識的に学習したスキルとは、
・単語帳で覚えた語彙(単語・熟語)
・テキストで学んだ文法
・例文暗記
などのことです。
母語は「理解可能なインプット」だけで習得可能。
しかし外国語の場合、先ほどもお伝えしたとおりインプット量が圧倒的に少ないため、
それだけでは習得することは困難です。
そこで「意識的な学習によって身につけたスキル」を何度も繰り返すことですらすら使いこなせるようになるというプロセスが必要になります。
ポイントは何度も繰り返すというところ。
多くの日本人は学校英語を通じて「意識的に学習したスキル」はそこそこ持っていると思います。
だから英文を読めばそれなりに理解できる。
だけど英語を話したり書いたりしようとするとフリーズしてしまう人が多いのではないでしょうか?
机の上で学習したスキルを実際に使いこなせるようになるには、
何度も繰り返し使うことが必要なのだそうです。
ネイティブが使う自然な英文を大量にインプット(学習テキスト、映画、ドラマ、小説、音楽)
↓
英文を音読
↓
単語を入れ替えて新しい文を作る
↓
覚えた文、作った文を実際の会話で使ってみる
このサイクルを延々と繰り返すことによってインプットした英語が自分の血肉となり、アウトプットで使えるようになるわけですね。
まとめ:第二言語習得論に基づく英語勉強法
今回ご紹介した「外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か」の要点をまとめます。
外国語を習得するためにやるべきことはこの2つ
1. 理解可能なインプット
・内容が理解できる文章をたくさん読んだり聞いたりする
・インプットの質を上げるためには、アウトプットの必要性を作る
・インプットの量を補うためには、例文暗記を行う
2. 意識的に学習したスキルを何度も繰り返す
・学んだこと(語彙、文法、例文)が口からスラスラ出るようになるまで繰り返し練習する
英語学習は目に見える効果が表れるまでに時間がかかりますが、焦らずコツコツ取り組んでいきたいですね。
第二言語習得論の全体像を知りたい方は、ぜひ白井先生の本を読んでみてください。