こんにちは、えまです。
英検1級合格を機に、もう一度基礎から英語学習法を学びたいと思い、最近色々と調べています。
そのなかで出会ったのがこの本。
「外国語上達法」(千野栄一著・岩波新書)です。
著者は、言語学者であり東京外国語大学の名誉教授という、いわば語学のプロ。
数多くの著書・訳書がある言語学の権威です。
そんな方の言うことなら間違いないだろうと思い、最初に手にとったのがこの「外国語上達法」でした。
今回は、この本から学んだことをシェアしたいと思います。
Contents
語学の習得に大切なのは、コツを知ること
語学の習得において、最初に知っておくことが2つあります。
1つは、
外国語の習得にはその習得を容易にするコツがあり、まずそのコツを知ることが大切
ということ。
(その外国語習得のコツを説いたのが本書というわけですね。)
そしてもう1つが、
大人になってから外国語を学ぶ場合は、狭義のバイリンガル=2つの言語をほとんど同じように操ることは無理だと知ること
です。
よく「これであなたの英語力がネイティブレベルに!」といった教材の宣伝を見かけるので、みんなどこかで「頑張ればネイティブみたいになれるかも…」と信じているところがあるのではないでしょうか。
でも、外国語として英語を学ぶわたしたちは英語のネイティブのようにはなれないし、その必要もないのです。
アメリカ人が、日本人と同じようには日本語を話さないのと同じこと。
これを意識の片隅に置いておくことで、ちょっと肩の力が抜けませんか?
- 語学の習得には、習得のコツを知ることが大切
- ネイティブのように英語を操れるようにはなれないし、それを目指す必要もない
その言語を学ぶ目的と目標レベルを決める
言語を学ぶ前に、まずやるべきことは以下の2つです。
1つめは、どの言語を何のために学ぶかをはっきり決めること。
「何語」を学ぶかを決めない人はいないと思いますが、「何のため」に学ぶかを決めないまま学習を始める人は多いのではないでしょうか。
千野先生によると、語学学習の目的を定めないままなんとなく学習をしている人は、挫折しやすいのだそうです。
千野先生に反論するわけではないですが(笑)、この点に関してはちょっと違う意見を持っています。
つまり、必ずしも初めから目的を決めなくてもいいのではないかというのが個人的な意見です。
私は英語学習の目的を特に決めていたわけではありませんが、英語を勉強していたからこそ、今の翻訳の仕事に就くことができました。
転職する直前まで、自分が翻訳者になるなんて考えたことなかったです。
人生ってわりとそういうものではないでしょうか?
すでに語学を学ぶ目的が明確に決まっている人は何も問題ないですが、「具体的に何に使うのかはまだわからないけど、純粋にこの言語を興味がある」でも十分な動機だと私は思います。
その言語と親しくなる過程で、必ず自分の人生とクロスすることがあるはずですよ。
転職活動中に勇気をもらった動画です→https://www.youtube.com/watch?v=XQB3H6I8t_4
2つめは、習得したい言語をどの程度習得するつもりかの見通しをつけること。
要は、ゴール地点を決めないとスタートできませんよ、ってことですよね。
海外旅行で現地の人とちょっとコミュニケーションが取れる程度なのか、英語会議でバリバリ発言できるまでなのか、通訳者になりたいのか…
目指すレベルによってかけるべき時間も労力も方法もまったく違ってくるので、これはそのとおりと思います。
ちなみに私は、「外国人の友達(まだいませんがw)と会話が1時間以上楽しめるレベル」です。
- どの言語を学ぶかと何のためにその言語を学ぶかを決める
- 学ぶ言語をどの程度まで習得するかを決める
上達に必要な2つのもの
上達に必要な2つのものは、「お金」と「時間」です。
まず「お金」については、人間はケチなのでお金を払うとそれをムダにしたくないから頑張るのだそうです。
これはかなりわかる気がしますね。
大学時代の話ですが、なけなしの貯金で5万円のアルクの教材を買ったときは、かなり必死で勉強した記憶があります(笑)
また、語学の習得には繰り返すことが不可欠なので「時間」も絶対必要。
千野先生によると
「(外国語を学び始めて)半年ぐらいはがむしゃらに進む必要があるが、その後は少しずつでも毎日やることが大切」
なのだそうです。
- お金
- 時間
語学習得のために覚えるべきこと
語学習得のために覚えることは「語彙」と「文法」です。
目から鱗がおちたのは、
・どの言語でも、テキストの90%は頻度の高い3000語でできている
・残りの10%は辞書を引けばいい
と言い切っていたこと。
3000語というと、大学受験時に覚える英単語よりも少ない数です。
それで90%がカバーされているといのは、とても驚きでした。
日本の英語教育では、簡単な単語を使いこなせないうちから、どんどん難しい単語を覚えさせられる傾向にありますよね。
より多くの語彙を覚えようとするよりも、まずは頻度の高いコアな単語を深く知ることが大切です。
- 語彙
- 文法
「本当の意味で会話が上手」とは?
最後に、英会話について。
そもそも会話とは何かというと、
自分が相手に伝えたいことを伝え、相手が伝えたいと思っていることを聞くこと。
これは、外国語だろうと母国語だろうと大事なことですよね。
本書の中でダメな英会話例として挙げられていたのは、
外人を見かけると英会話練習をしたいがために話しかけ、会話集で覚えた文やフレーズを一方的に話して(暗唱して)帰っていくパターン
でした。
日本に暮らしている英語ネイティブの人は、一度はこういう経験があるのではないでしょうか?
でも「英語ネイティブ」は、英語ネイティブである前に私たちと同じ人間なんですよね。
私だって、日本語を勉強している外国人から全く状況を無視した「教科書日本語」をまくしたてられたら、めんどくさい…と思ってしまうかもしれません。
相手の気持ちを考えて、けっして「練習台」にしないことは気を付けないといけないなと思いました。
これを踏まえた上で最も印象に残ったのは、
本当の意味で会話が上手とは、いささかの軽薄さと内容である
という千野先生の師匠の言葉でした。
いささかの軽薄さとは、間違えることを恐れない覚悟です。
間違えることを避けて口をつぐんでしまうことは私もよくあるのですが、もっと軽い気持ちで英会話を楽しむ気持ちが大切ですよね。
そして内容とは、「教養の問題であり、知性の問題である」とのこと(耳が痛い・・)。
私は、これを英検2次の準備をしていて強く実感しました。
英会話って、英語力よりも教養と知性が試されているんだなと。
日本語でアウトプットしようと、英語でアウトプットしようと、アウトプットの内容は、私という人間がもつ知識や経験の産物です。
これを磨かないことには、日本語でも中身のある会話をすることはできない。
そのことに、この本を通じて改めて気づかされました。
以下、私が特に感銘を受けた本書中の言葉を引用させていただきます。
(どちらも手帳にメモしてあります!)
・人と会ってしかるべき会話をかわすためには常に準備が必要で、絶えず本を読み、政治や経済や、文化や芸術に関心を持たなければ恰好の話題を提供できない(176頁)
・あの人は単語を知っているからとか、気の利いた表現をするからといって会話をするのではない。
会話をすることによって新しいことを知り、考えさせられ、喜びを得るからこそ話をする(中略)
外国語でする会話と日本語でする会話との間には何らの差もない。(同頁)
おわりに:時代を超えて受け継がれる外国語習得のコツ
この本を読んで、外国語習得の方向性に迷いがなくなりました。
目標とするレベルへの到達に向かって、お金と時間を投資し、頻度の高い語彙と文法に習熟し、毎日学習を継続するとともに、
世界で起きているあらゆる出来事に関心を持ち、自分の頭で考える教養と知性をもった人間になる
今回は本書の核となるメッセージを紹介したつもりですが、ここには書ききれないほど内容の濃い本です。
本を読み終わった後は、英語や外国語への見方、感覚が変わりました。
出版から30年以上経った今も色褪せることのない、まさに外国語学習法のバイブルだと思います。