今回は「初心者が独学で翻訳を学ぶ3つの方法」をお伝えします。
- 翻訳の仕事をやってみたいけど、まず何をすればいいのかわからない
- 今後、英語力を活かせるスキルを身に付けたい
という方に参考になれば嬉しいです。
初心者が翻訳を独学で学ぶ3つの方法
私も実践してきた独学で翻訳を学ぶ方法は、以下の3つです。
- 翻訳のプロが書いた本を読む
- 翻訳会社の無料翻訳力チェックを受ける
- 翻訳コンテストで腕試し
順番にお話します。
①:翻訳のプロが書いた本を読む
翻訳はマニュアル化が難しい「職人芸」のようなところがあります。
とはいえ、ゼロから翻訳を始める場合、なにか教科書的なものがほしいですよね。
そこでおすすめなのが一流の翻訳者が書いた本を読むこと。
翻訳には「英文和訳」と「和文英訳」がありますが、基本的には「英文和訳」から始める人が多いです。
これから翻訳を始める方には以下の2冊がおすすめです。
和訳に求められるスキルは大きく分けて「英文読解力」と「日本語表現力」の2つ。
このうち「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 決定版」は主に英文読解力、「英文翻訳術」は主に日本語表現力を高めることに役立つ書籍です。
越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 決定版
日本人が誤訳しやすい英文をレベル別に190問取り上げ、解説された本。
- 英文法は一通り勉強したけど、細かい部分は自信がない
- 素直な英文なら読めるけど、ちょっとひねった英文になると理解できなくなる
- 英文読解のポイントをざっと確認したい
という方はぜひ読んでおきましょう。
日本語がどれだけ上手く書けても、英文の意味を正確に理解できなければ翻訳できませんよね。
この本では著者の長年にわたる英語講師と翻訳家の経験から、日本人が陥りやすい英語の罠が幅広く解説されています。
「今さら大学受験用の英文解釈テキストやるのはだるい…」という私みたいな方がさくっと英文法の穴を埋めるのに最適な本です。
現時点でわからない問題が多くても落ち込まなくて大丈夫。
全問しっかり理解できてしまったら、この本を読む意味がありません。
冒頭の「誤訳を防ぐための3か条」は必見。
文法項目別チェックテスト、英語学習相談Q&A、越前氏のインタビューもあり、盛りだくさんの内容となっています。
英文翻訳術
英文翻訳(=和訳)のノウハウが学べる一冊。
「翻訳講座の受講者の訳文添削」と「著者の試訳」が載せてあり、単なるマニュアル本ではない実践的な内容になっています。
目から鱗が落ちるような翻訳のコツが山ほど詰め込まれていて、
どうしたらこんな本が書けるんだろう…と感動しました。
最初はちょっと苦しいかもしれませんが、めげずに読んでいくと段々面白くなってきますし、翻訳のノウハウも自分の中に蓄積されていきます。
一度にすべてを理解するのは難しいので、何度も読み返すつもりでまずは気楽に読むのがおすすめです。
他のおすすめ書籍はこちらの記事をご覧ください。
②:翻訳学校の無料翻訳力チェックを受ける
翻訳の勉強を始めるにあたって、まずは自分の現在地を知る必要があります。
そこで活用したいのが翻訳学校の翻訳力チェック。
たいていはプロの翻訳者が無料で添削してくれますので、これを使わない手はありません。
私が応募したのは以下の大手2社です。
どちらも自分の興味のある分野を選択できます。
分量も短めなので、翻訳が初めてという方も無理なく取り組めます。
サン・フレアの方がバベルよりも短文なのですが、難易度は若干上かなと思います。
結果は1週間以内にメールで送られてきます。
無料とは思えないくらい詳しい添削コメントがもらえるので、とても勉強になりました。
もし真っ赤になって返ってきても何も恥ずかしくない(むしろ沢山学べてお得)ので、ぜひ挑戦してみてください。
③:翻訳コンテストで腕試し
最後に紹介するのは、翻訳コンテストへの参加です。
- ぶっちゃけ、自分は他の翻訳者と比べてどう評価されるのか?
- 翻訳者としてやっていく実力は付いているのか?
こういったことは、自分一人で勉強していてもわからないですよね。
翻訳の上達には「他者による評価」が不可欠ですので、積極的にコンテストに応募してみることをおすすめします。
たとえ入賞しなくても、作品として真剣に取り組むこと自体が貴重な経験になりますし、訳例や解説から学べることもケタ違いに多くなります。
入賞しなかったときはもちろん悔しいですが、そのときにやってしまったミスはずっと忘れません。
独学で勉強するなら、こういう機会はぜひ生かしていきましょう。
未経験で翻訳者になる場合、採用選考でのアピール材料にもなりますよ。
どんな翻訳コンテストがあるのかについては、こちらの記事にまとめています。
翻訳スキルを高めるために大切なこと
これまで独学で翻訳の勉強を始める方法をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
どれか1つでも試してみていただければ嬉しいです。
以下では補足として、翻訳のお仕事をしていて「翻訳の上達には、コレが重要だな」と思うことを3つお伝えします。
①:日本語と英語をたくさん読むこと
いちばん重要だと思うのは、日本語と英語をたくさん読むことです。
要するに「インプット」ですね。
これは翻訳歴20年以上の大先輩もおっしゃっていたことなので、間違いありません。
翻訳の仕事を始めてショックだったのは、英語力はもちろんですが自分の日本語力の低さでした。
辞書を頼りに訳してみても、日本人が書いたとは思えないぎこちない文章しか書けず…。
「翻訳の要である日本語力と英語力をどう磨くか?」
その答えがたくさんの(良質な)文章に触れることです。
もっといえば、ただ漫然と読むだけでなく翻訳を意識することで吸収力がまったく違ってきます。
私は翻訳の仕事を始めてから、小説を読むときも、新聞を読むときも、言葉の選び方や句読点の付け方などを自然と気にするようになりました。
こうした言葉のプロが書いた文章をたくさん読んで技術を盗むことで、大人であっても言語力を十分向上させられると思っています。
第二言語習得論では「外国語の習得には大量のインプットが必須」とされています。
②:翻訳を誰かに見てもらうこと
次に重要なのは、自分の翻訳を他人に読んでもらうことです。
翻訳というのは、がむしゃらに頑張ったり、時間をかけたりするだけではどうにもならないもの。
手詰まりになったと感じたら、講師や先輩翻訳者に見ていただいて、アドバイスをもらうのが一番です。
とはいえ、独学だと頻繁に他人に見てもらう機会を作るのも大変ですよね。
だからこそ上記でご紹介した翻訳力チェックや翻訳コンテストといった機会を活用するのがおすすめなのですが、1~2日経ってから自分の翻訳を見直してみることも大事です。
時間をおくことで、訳文を客観的な目で眺めることができるようになるからです。
作業中は字面を追いかけることに必死になりがちですが、後から読み返すと
「何を言っているかわからない文章だな」
「ここが読みづらい」
「がっつり訳抜けしてる」
など、いろいろな気づきがあるはず。
若干はずかしいですが、和訳の場合は家族など親しい人に読んでもらうのもいいですよ。
「日本語として読みづらいとか、ひっかかるところがあったら遠慮なく教えて!」と言えばOKです。
やはり自分だけで完結するよりは、少しでも他人の目を借りたほうが改善しやすくなります。
③:仕事の場で翻訳をすること
「翻訳を誰かに見てもらうこと」とも共通するのですが、できるだけ早い段階で翻訳の現場に飛び込んでみることが大切だと感じます。
私はまったくの未経験で翻訳の仕事をさせて頂くようになりましたが、ぶちあたった壁の1つが
教科書どおりの英語ではない「生の英語」を理解することの難しさ
でした。
ビジネスの場で英語を使うのはネイティブスピーカーだけではありません。
それどころか、世界の英語話者の7割以上が非ネイティブだと言われています。
ときどき東南アジアの人が書いた英語を訳すことがあるのですが、明らかな文法ミスがあったり、意味がよくわからない(私の力不足もあると思いますが…)英文に頭を抱えることがしばしば。
もちろんネイティブであってもスペルミスなどは普通にあるので、それを「これはミスだな」と気付く力が必要になってきます。
英訳する場合であっても、日本人の書く日本語の意味がわからず悩むことがたくさんあります。
ビジネスの場で翻訳をしてみると、テキストに出てくるような英語・日本語なんて現実にはほとんどないということに気づかされます。
なので、「いつか翻訳の仕事がしたい」と思っている方は、すぐにでも行動に移したほうがそれだけ早く上達できると思います。
生の英語にたくさん触れて、慣れることでだんだんと「こういうことが言いたいのかな?」という推測力が養われていきます。これは実際に翻訳することでしか養えない大切な能力です。
私自身、まだまだこの力が足りないと痛感する日々ですが、経験をたくさん積むことで徐々に身につけていくしかなさそうです。
まとめ
今回は、これから翻訳を始めようという方向けに「独学で翻訳を学ぶ3つの方法」をお伝えしました。
- 翻訳のプロが書いた本を読む
- 翻訳学校の無料翻訳力チェックを受ける
- 翻訳コンテストで腕試し
翻訳学校に通うことを考えている方でも、まずは自分で独学してみるといざ本格的に受講したときに楽だと思いますし、そもそも「本当に翻訳がやりたいのか?」もはっきりしてくると思います。
翻訳はたしかに大変な仕事ですが一生もののスキルになるので、まずは気軽にできることから始めてみてください。
在宅で翻訳の仕事を得る方法はこちらの記事でご紹介しています。